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ガードナー症候群
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2026-11-06 11:11:03
# ガードナー症候群 ガードナー症候群(ガードナーしょうこうぐん、英: Gardner syndrome)は、家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis; FAP)の表現型の一つとして歴史的に用いられてきた名称であり、多発する大腸腺腫に加えて、骨腫、デスモイド腫瘍、類表皮嚢胞(epidermoid cyst)、歯牙異常などの大腸外病変を特徴とする。 原因はAPC遺伝子の生殖細胞系列における病的バリアントであり、常染色体優性遺伝の形式をとる。 現在では、ガードナー症候群をFAPとは別個の遺伝性疾患とみなすのではなく、APC遺伝子の病的バリアントによって生じるFAPの表現型の一つとして捉える。GeneReviewsでは「Gardner syndrome」という名称を歴史的なものとし、これらの表現型はいずれもFAPのスペクトラムに含まれるとしている。 FAPは、大腸に多数の腺腫性ポリープが発生する遺伝性疾患である。典型的なFAPでは大腸に数百から数千個の腺腫が形成され、適切な治療を行わない場合には大腸癌を発症する危険性が極めて高い。 ガードナー症候群と呼ばれてきた表現型では、この大腸腺腫症に加え、骨腫、歯牙異常、類表皮嚢胞、デスモイド腫瘍などの大腸外病変がみられる。 原因となるAPC遺伝子は、染色体5q22.2に位置する腫瘍抑制遺伝子である。APC遺伝子の生殖細胞系列における病的バリアントによってAPC関連ポリポーシスが生じる。 遺伝形式は常染色体優性遺伝である。APC関連ポリポーシス患者の約75~80%では罹患した親が存在し、患者の子は性別にかかわらず50%の確率で病的バリアントを受け継ぐ。残りの患者では新生変異によって発症する場合がある。 典型的なFAPでは、大腸の腺腫性ポリープは主として10歳代から20歳代に出現し始める。35歳までに95%の患者にポリープが認められ、典型例では数百から数千個に達する。 大腸腺腫は大腸癌の前駆病変となる。未治療のFAPでは大腸癌の発症リスクが極めて高く、GeneReviewsでは未治療患者における大腸癌診断時の平均年齢を39歳としている。 ガードナー症候群の特徴的な大腸外所見として骨腫(osteoma)があり、特に下顎骨や頭蓋骨などに生じる。 また、過剰歯、埋伏歯、歯牙腫(odontoma)などの歯牙異常を伴う場合がある。これらの所見は、消化管症状に先行して認められることがある。 類表皮嚢胞(epidermoid cyst)などの皮膚病変を伴うことがある。 デスモイド腫瘍(desmoid tumor)は、APC関連ポリポーシスにみられる重要な大腸外病変の一つである。組織学的には悪性腫瘍ではなく遠隔転移を生じないが、局所浸潤性を示し、発生部位や大きさによっては周囲の臓器や血管などを圧迫することがある。 腹腔内、腹壁などに発生することがあり、腹部手術後に発生または増大することもある。 APC関連ポリポーシスでは、網膜色素上皮の先天性肥大(congenital hypertrophy of the retinal pigment epithelium; CHRPE)が認められることがある。特に両側性・多発性の病変はAPC関連ポリポーシスを示唆する所見の一つとされる。 FAPでは大腸癌以外にも、十二指腸・ファーター乳頭周辺の腺腫および癌、甲状腺癌、肝芽腫などのリスク上昇が知られている。 現在では、ガードナー症候群という表現型を含むAPC関連ポリポーシスの診断には、臨床所見に加えて遺伝学的検査が用いられる。 APC関連ポリポーシスは、APC遺伝子の生殖細胞系列におけるヘテロ接合性の病的バリアントまたは病的である可能性が高いバリアントを同定することによって遺伝学的に診断される。 多数の大腸腺腫に加え、デスモイド腫瘍、骨腫、歯牙異常、類表皮嚢胞、多発性・両側性のCHRPEなどは、APC関連ポリポーシスを疑う所見となる。 治療および経過観察は、基本的にFAPを含むAPC関連ポリポーシスとして行われる。 大腸については定期的な内視鏡検査による監視が必要であり、古典的FAPでは一般に10~15歳頃から1~2年ごとの大腸内視鏡検査が推奨されている。 大腸癌が診断または強く疑われる場合、著しい症状がある場合などには大腸切除術の適応となる。多数の腺腫によって内視鏡的な監視や切除が困難になった場合などにも予防的大腸切除が検討される。 また、大腸以外についても、十二指腸・胃の病変、甲状腺、デスモイド腫瘍などを対象とした経過観察が行われる。 本症候群の名称は、アメリカの遺伝学者エルドン・J・ガードナー(Eldon J. Gardner)に由来する。 ガードナーは1951年、大腸の多発性ポリポーシスと骨腫などの大腸外病変が同一家系内にみられることを報告した。その後、大腸ポリポーシスと骨・軟部組織病変などを組み合わせた表現型が「Gardner syndrome」と呼ばれるようになった。 分子遺伝学の発展によって、ガードナー症候群と呼ばれていた病態もFAPと同様にAPC遺伝子の病的バリアントによって生じることが明らかとなった。このため、現在では独立した疾患というよりもFAPの表現型スペクトラムの一部として位置づけられている。 「ガードナー症候群」という名称は現在でも医学文献で使用されることがあるが、その位置づけは歴史的に変化している。 GeneReviewsでは、Gardner syndromeおよびTurcot syndromeという名称について、いずれも現在ではAPC遺伝子の病的バリアントによって生じるFAPスペクトラムの一部であることが明らかになっているため、「歴史的な関心のある用語であり、使用すべきではない」としている。 一方、医学文献では現在も、大腸腺腫症に骨腫、デスモイド腫瘍、類表皮嚢胞などの大腸外病変を伴うFAPの表現型を説明する用語として「Gardner syndrome」が用いられることがある。
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ガードナー症候群